書店で買ってくれるとうれしいです
どの作家さんもそうだったろうと思うけど、初めて自分の本が書店で売られたときは、不安でしかたなかった。
担当編集さんの「評判いいですよ」の一言に舞い上がったり、ネットの批評に落ち込んだり。近所の本屋さんに、日に何度も足を運び、平積みされている冊数を数えたり、立ち読みしている人のうしろから「買いたくなれ~」と念力を送ったり、自分の本を目立つ場所へこっそり移動したり。
今では、お蔭様で何冊も自分の本が出ているので、少しは平静を装えるようになってきた。
・・・はずだったけど、今回はそうもいかない。
「プチクリ」は、僕にとって新境地開拓の本だから。
今回の本、ターゲットど真ん中は、実はニートやフリーターと呼ばれる人たち。
ヒットしたドラマや、ヒットしてる曲ばかり追いかける人たち。。
マンガは、コンビニでジャンプやマガジンを立ち読みするだけでOKの人たち。
ネットを見ることがあっても、自分でブログを開設したりしない人たち。
いま一番、「普通」な若者達と言えるかも知れない。
そういう人達に、一番読んで欲しい。
「プチクリ」は、そういう人達が一歩進んで、もっと自分の人生を、積極的に楽しく生きていくための方法を、提案する本だ。
彼らが読んでくれれば、きっと、すごいインパクトを与えられる。
すごく、元気を引き出せる。
そして、一番役に立つと思う。
が、そこで問題だ。
そういう人達に、どうやって僕の本に興味を持ってもらえばいいんだろう?
ごく一部の本をのぞいて、ほとんど「活字」の書籍が売れないこの時代に・・・
僕の従来のファンに、こういう「ぬるい人」は少ない。
自分なりのアンテナを持っている。
ネットで評判の本をすばやく書店でチェックしたり、これと思った映画は劇場できちんと見たり、自分が注目してる作品はDVD-で持っていたり。自分のブログに感想や批評を発表している人だって少なくない。
そういう人なら、「本が出ました」とこういうところで一言書けば大丈夫なのだ。
おもしろそうだと思えば、必ずチェックしてくれる。
本屋で手にとって見てくれる。
そういう人たちは、既に「プチクリ」の場合も多い。
もちろん、この本は、既に「プチクリ」の人たちが読んでも、充分に楽しめるようにできている。自分が今までやってきたことが、総体としてきちんと言語化され、評価されることは、気持ちが良い。今後のがんばり方向だって、ますますはっきりしてくるだろう。
そういう意味では、充分に役に立つようにできているつもりだ。
が、普通のニートやフリーターの場合、ここで僕が何を書いても、動いてくれない。
彼らが動くのは、「みんなやっていること」だけなのだ。
ベストセラーなら読む。
TVで紹介されていれば読む。
ところが、「プチクリ」は12月8日発売なのに、いま現在、まだオンライン書店では予約も始まっていない。
ついこのあいだ部数と定価が決まったばかりだから仕方ないけど、「積極的な営業をしている」とは言いがたい状況なのだ。
そんなわけで、アンテナの鋭いネットのウォッチャー諸氏に、ここでお願いをさせて下さい。
「お願い」なので、ここからは「ですます調」で日記を書きます。
できれば、オンライン書店ではなく、本屋さんでプチクリを買って下さい。
本来、物書きである僕がお客様であるみなさんにこんなことお願いするのは筋違いです。
そこを、あえてお願いします。
「プチクリ」は初版部数がそんなに多くありません。
有名な作家でもなく、タレントさんのタイアップ本でもないため、ベストセラーを約束された本ではないからです。
だから、地方の小さな本屋さんには入荷さえされないかもしれません。
「プチクリ」を絶対に読みたい、と熱心な方ほど、「オンライン書店で」ということになってしまいます。
でも、ベストセラーの起爆力は、本屋さんが「この本は売れる」と実感することから始まります。
実感すれば、取次ぎにたくさん、注文してくれます。
その動きが、取次ぎへ、そして出版社へと波のように波及していく結果、増刷もきまります。
在庫が潤沢になり、平積みの面積も大きくなります。
たしかにオンライン書店は便利です。僕もしょっちゅう、どころかほとんど毎日利用しています。
本屋さんに注文するなど、時代に逆行することかもしれません。
それを承知で、あえてお願いします。
オンライン書店ではなく、本屋さんで「プチクリ」を買って下さい。
そうすることで、プチクリをニートやフリーターという、本当に必要としている人達に届ける仕事のサポーターの役目を果たしてもらいたいのです。
「表現する」ということは、ものを作ったり語ったり書いたりするだけではありません。
スポーツを人に見せるのも表現です。教育だって、生徒たちに向けた表現です。
育児だって、たった一人の観客を相手にした表現です。
そして、意外かもしれませんが「投票」と「消費」も表現です。
「投票」は為政者や行政担当者に対して、国民の民意を「表現する」手段です。
そして「消費」は、「この商品に賛成票を投じる」「この企業に賛成票を投じる」という表現でもあります。
APPLEだから、SONYだから、という買い方は、企業に賛成票を投じる買い方だと思います。
安いから、便利だから、以外の買い方があることは、賢明なみなさんなら、既に実感としてご存知かと思います。
そういう気持ちで、みなさんに「プチクリ」という考え方に一票投じてほしいのです。
もちろん、ネットで買っても、一票になります。
ただ、本屋さんで買う一票と、ネットで買う一票で、現在、重さが違うのです。
本屋さんの一票の方が圧倒的に重い。
良い、悪いの問題ではありません。
これは、現在の出版社・取次ぎ・小売り店というシステムが崩れない限り事実なのです
みなさんの一票を、有効に使ってほしいのです。
と、ここまでは僕のお願いです。
ここから先は、作戦案です。
紀伊国屋書店が通勤・通学圏にある人は、「プチクリ」を紀伊国屋で買っていただけるとありがたいです。予約も受け付けてくれるはずです。
なぜかというと、紀伊国屋のベストセラーリストは出版界に多大な影響力を持っているからです。
現実的な話、たぶん初回出荷では小さな本屋さんまでは廻りきらないと思います。その場合はオンライン版の紀伊国屋書店で通販もやってます。
「本が売れる」というのは「波を起こす」ということに似ています。
最初は小さい波をおこし、それをうまく大きくしていくことが必要です。
少ない部数の初版の時は、できれば紀伊国屋で買っていただければ、出版社側に「よし、増刷しよう」というリアクションの波を起こすしやすいはずです。
増刷されれば、小さな地方書店まで在庫が廻り出します。
紀伊国屋ベストセラーリストに載れれば、ふだん書店に行かない人にも「じゃあ近所の本屋を覗いてみるか」と思ってもらえるでしょう。
物書きがこういうお願いをするのは、みっともないかもしれません。
でも、どうせなら自分の本を書くだけでなく、「売り方」も表現に結びつけたいな、と考えたのも本当です。
みなさんも、「買い方」を表現に結びつけてみてください。
というわけで、「プチクリの初版は、紀伊国屋書店で買ってくれませんか?」というお願いでした。
紀伊国屋書店、全国に59店もあるようです。各店舗の在庫確認や店内の棚位置も検索できます。あなどれないなぁ。
これからは毎日、「はたして売れるだろうか?」というドキドキの日々が始まるわけですよ。ああ、心臓にわるい。
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コメント
今は昔ですが、学生時代本屋でバイトしてました。
小さい店だったので仕入れだとか在庫確認、
返品作業なんかもやりましたが、売れてる本は入ってこないし、
送りつけられても売れない本もあるしで、当時でもなかなか大変でした。
紀伊国屋が出版部数・流通の目安になってるって事ですね?
さいわいバイト先の近くに出来たので、
プチクリは紀伊国屋で買う事にします。
(店頭予約しといた方がよいですか?)
余談ですが
niftyココログ。
IEでコメント書こうとしたら、ひどい文字化けで
書き込めません?旧Macには厳しいようです。
UPして読めるのか?不安ですが投稿してみます。
投稿: mono | 2005年11月26日 (土) 13時24分
>そんな本好きの人たちばかりであること。
完全に余談ですが、名古屋に本拠を置く某中堅書店の
先代カリスマ社長が「本好きの社員はいらない!
商売が好きな社員を求める」というような事を仰ってました。
(「本好き」の社員には共通した欠点がある…とも指摘
されていたんですが、内容は忘れました;)
投稿: ueda | 2005年11月26日 (土) 23時16分
岡田さんの本が、たくさん売れるように、紀伊国屋で、購入します。
プチクリの発売を楽しみにしてます。
投稿: ゆか | 2005年11月27日 (日) 04時26分
>monoさん
本屋さんでバイト経験ありですか。大変でしたね。今だったら「生協の白石さん」がどこも数が確保できなくて困ってるんじゃないかなぁ。
店頭予約、お願いします!
>uedaさん
本当に「商売が好き」なら、本屋なんかやめてドラッグストアとかやってるような気が(笑)
>ゆかさん
ううう、感謝です!
できれば予約注文してください!
投稿: 岡田斗司夫 | 2005年11月27日 (日) 08時40分
> なぜかというと、紀伊国屋のベストセラーリストは出版界に
>多大な影響力を持っているから。
は解るんだけど、意図的に集中させてベストセラーのようにみせて全国の書店に広がっても、買わない人が買う機会が増える
とは思うけど、返品もその分多くならないだろうか。
地球に優しくないような気が。。。
投稿: 太良 | 2005年11月27日 (日) 10時51分
>太良さん
もちろん返品はその分多くなりますし、地球には優しくありません。現在、ベストセラーの「生協の白石さん」も、おそらく100万部を軽く超えるベストセラーになるでしょう。そのうちの10~20万部はゴミになってしまうと思います。
全てを満足させる解というのはないので、自分にとって最善と思われる行動を選んでください。
投稿: 岡田斗司夫 | 2005年11月27日 (日) 14時02分
岡田先生の本、楽しみです。学校(職場)の課題図書にします!
http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2004/12/128.html">歴史的特異日に発売…なんか因縁めいてますね。ちと嬉しい。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2005年11月27日 (日) 14時54分
こんにちわ。
私は本屋の雰囲気が好きなので、
ネットでは買いません。
ユザワ地下の啓文堂でぶらぶら書棚の間を散策しながら、
膨大な書物が象徴している世界の途方もない広大さに眩暈を覚えながら(単なるバカなので 笑)、無邪気な感動を覚えながら
目当ての本を購入します。
本屋さんを助けることになるなら喜んで!
岡田さんの新刊も、啓文堂(かロンロン)で購入します!
投稿: yuta | 2005年11月27日 (日) 15時46分
言いたいことが伝わりきらない気がしたので、全面的に書き直しました。
「日記を書き直す」という行為って、なんとなくヘンテコだよね。
> 蘊恥庵庵主
よろしくお願いします!
>yutaさん
僕のお気に入りはブックスルーエと、南口のブックスいずみです。
投稿: 岡田斗司夫 | 2005年11月29日 (火) 15時48分
プチクリの簡易版を新書で出すことってできないんですか?
今回のターゲットだったら内容を薄くして新書で出すのがいいと思います。
やっぱりベストセラーになるものって読んでみると「軽いな」と思いますが、逆に言うとそれくらいでないと読んでもらえないですよね。
同じ題材でもターゲットによって2種類の本を出すってのもありだと思います。
投稿: カンダタ | 2005年11月29日 (火) 23時23分
紀伊国屋でサイン会とかやればいいのに・・・・。
個人的には三省堂神保町本店でやって欲しい。
そしてエスカレータのところに写真をぶら下げて欲しい。
投稿: 大石恵 | 2005年11月30日 (水) 12時38分
はじめまして。
ああ~。まだ、発売されていなかったんですね。先ほどこの本のことを知って、さんざん探してしまいましたよ。オンライン書店で(笑)。
紀伊国屋、幸い近くにあるので、そちらで購入したいと思います。
投稿: うたこ | 2005年11月30日 (水) 16時25分
紀伊国屋が県内に存在しない(リストに県名すらない)僻地住人の私はいったいどうすれば…。
密林で買うよりは、紀伊国屋BookWEBで買った方がまだしも貢献できるのかな?
それとも、紀伊国屋とは全く関係のない町の書店で買うべき?
ただ町の本屋さんに出てくるまできっと待ちきれない…。
出ないかもしれないし、暇がかかるのはわかってるし。
うー。
投稿: 亜巳 | 2005年12月 7日 (水) 11時08分
なんだか熱いじゃないですか!
いいでしょう本屋で探して買いましょう。
投稿: JIMY-M | 2005年12月30日 (金) 13時41分
こんばんわ。
実はこちら岡田さんのHPはたまに拝見させていただいておりましたが、BLOGが出来てからは初めてになります。
さて、私、『ゲームセンターあらし』世代なのですが、作者のすがやさんのHPにあります、最新日記を読んでおりましたら、
(http://www.m-sugaya.com/nikki/index_new.htm)
すがやさんが大学での講義にこの本をテキストとして使用したそうです。でその日記のしめくくりに、
>『プチクリ』を読んだとき、「これは若者たちの魂の救済の
>書になるかもしれない」と思ったが、確かにそのとおりだっ
>たようだ。「インストラクショナル・デザイン」で学んだこ
>との受け売りでもある「キャロルの時間モデル」や「5000時
>間仮説」の説明も、ちょっと励みになったようだ。
> とりあえず学生たちに最後の授業を満足してもらえたよう
>で、気分を良くして帰宅したのでありました。
と書いてらしたです。
私も早速買うコトにします。
それでは失礼いたします。
投稿: YOU | 2006年1月22日 (日) 20時17分
岡田先生、初めまして。
TBにある東リ、先日、大阪の紀伊國屋書店で「プチクリ」を購入しました。
今では、この本を励みにブログで
色名事典を発表しています。
『プチクリ』と言う言葉を流行させるためにもがんばります!
投稿: セタミツコ | 2006年2月13日 (月) 23時04分