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2006年9月22日 (金)

芸人のジレンマ

 芸人さんって難しいなぁ。
 たぶん芸人の間で評価されるのは「面白いこと」だと思う。
 ダイナマイト関西とかM-1のような体育会系のイベントが芸人間でマジに受け止められるのも「ホンマは俺の方が面白いんじゃあ!」という叫びがあるからで、その根底には「面白いこと=芸人の価値」という価値観が存在してるからだろう。

 でも、テレビというのはそんなに「面白さ」が必要とされてない世界だ。
 いっけん、違うようにも見える。若手芸人はひっぱりだこだし、ネタ見せ番組といわれるのも多い。テレビでは「面白い芸人」が必要とされている、と誤解してる人がいるのも当たり前だ。

 でも違う。
 テレビが必要としてるのは「楽しい芸人」であって、「面白い芸人」ではない。
 テレビというのは本質的に「視聴者を寂しがらせない装置」である。一人で見ているのであろうと、家族や恋人と見ているのであろうと、その関係の空疎さを埋めることがなによりも大事なんだと思う。

 誤解してほしくないけど、これは別にテレビ批判でもなんでもない。
 「テレビに熱中する現代人は、心が寂しい」みたいな、つまんないことを言うつもりもない。
 古代社会から現代に至るまで、人間は寂しくて当たり前だ。江戸時代でも家に帰ると武士でも商人でも「なんとなく空虚」というのは感じていたはずだ。
 ・・・いやいや、なんだかやけに壮大な余談に流れつつあるぞ。僕が今、書こうと思ってるのはあくまで芸人話なので、この話はここまで。

 で、テレビは「寂しさをまぎらわせる装置=楽しい雰囲気発生器」だから、そのメンバーとして必要なのは「楽しい芸人」なんだよね。「面白い芸人」は、その面白さがわかる・わからないという差異が発生してしまって、マズいわけですよ。
 それに「面白さ」というのは作品性だから、やはり鑑賞者には「寂しさ」「孤独感」を強いることになる。(日記だからこのあたりのロジックはジャンプさせてるよ。読んでる人は各自補完してね)

 でも、芸人の間では、やっぱり評価されるのは「面白いかどうか」なんだよね。
 「楽しい」なんていうテレビ的な駒にされた芸人ではなく、みんなきっと、「正々堂々と面白くなりたい」んだと思う。
 ああ、切ないなぁ。僕たち視聴者が実はどんなに「面白さ」を必要としていないか、彼らは知っているんだ。でも「面白くなりたい」んだろうなぁ。
 かつての爆笑問題にしても、最近の次長課長にしても、「面白さよりも楽しさ」を選んだから売れたというのは、きっと芸人だったら誰でもわかってるんだろうなぁ。
 

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コメント

納得がいきつつも寂しくなりました。

> テレビというのは本質的に「視聴者を寂しがらせない装置」である。

冷たい言い草ですが、テレビでの露出度を稼ぐのは芸人で、
本物には「藝人」という字を当てるべきかもしれません。

これは山藤章二氏の受け売りなのですが「藝」という文字には
種をまき、じっくり手をかけて育て、美しい花を咲かせるという
意味があるそうです。今の「芸」は、じっくり手を~の部分を
失っているように見えると結んでいました。

今では進んでチャンネルを選ぶのは「笑点」だけになったような。

投稿: ラジヨ | 2006年9月22日 (金) 10時41分

深夜枠でおもしろいと思ったお笑い番組が、いざゴールデンに進出すると途端につまらなく感じるのも、やっぱりそういった理由なんでしょうねぇ・・・。
ほぅーむ。

投稿: MOMIGE | 2006年9月22日 (金) 14時50分

今、お茶の間で活躍している芸人の芸は、
いわゆる昭和の芸人のTV用モードとはまた違った段階にきているんでしょうね。
世間的には売れてないけどミュージシャンが評価するミュージシャンがいるように、
芸人内で評価する芸人の存在が顕著になってきましたね(そういう存在は、昔からいたのかもしれないけど)。
面白い芸人達は、これからどこへ行くんでしょうか。

投稿: くすだま | 2006年9月23日 (土) 00時51分

続けてコメントします。
松本人志が、TBSで「わらいのじかん」の後に、
「リンカーン」を始めたのは象徴的だと思います。

投稿: くすだま | 2006年9月23日 (土) 00時55分

その観点から考えると視聴者は「面白い」芸人よりも
「面白いというラベルの貼られた」芸人の方を
好む、といった感じですかね。なんかブランド
品みたいですが…。

投稿: sa | 2006年9月24日 (日) 09時36分

つまり今は「面白い」芸人よりも
「面白いというラベルが貼られた」芸人を
好むということでしょうかね。ほとんど
ブランド品みたいな感じですが…。

投稿: sasa | 2006年9月25日 (月) 13時43分

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「面白い芸人」と「楽しい芸人」については僕も結構この日記でも書いてるし、ある商業媒体の原稿にもそういうの出したことあります(ボツになったけど(笑))、少し検索してもそういう趣旨の三つぐらいありました、もっと深くググればもっと見つかったかも知れませんが、昨... [続きを読む]

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