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2006年10月 6日 (金)

「マンガ夜話」について

 マンガ夜話がないと寂しい。
 最後のオンエアからもう1年半も経ってしまった。
 いしかわさんは歩いて5分のご近所で、よく吉祥寺でもばったり会う。夏目さんも大月さんも仕事やイベントで時々会う。笹峰あいちゃんだってmixiにいるし、それどころかスタッフやディレクターでもmixiで日記読んだり近況を教えあったりしている人もいる。
 
 でも、あの番組がないと僕は寂しい。
 僕はマンガ夜話が好きだ。
 本番の数週間前にマンガ全巻ぞろいが届けられ、「さて、やるぞ!」という覚悟と新しいマンガに仕事として出会える喜び。
 本番直前の楽屋で、出演者が互いの腹の内を探り合う、あの会話。夏目さんが思わぬところで「あ、それ『夏目の目』で言うから」と言い出し、あわててトークの流れを組み立てなおしたり、大月さんが「ダメだ俺、このマンガ好きになれん!」と叫んだり、いしかわさんが今日の靴下の色を自慢したり、あの楽屋の空気が好きだ。
 
 生放送で、お互いの話が交錯しだして、用意していた持論を展開するのか、その場で思いついた「新しい流れを作る意見」を投入するのか、一瞬で決めなければいけない、あの緊張感が好きだ。
 
 話が佳境に入り、つい熱くなってしまうといつもフロア・ディレクターがカンペで「どのページか具体的に!」という指示を出す。当然、いしかわさんはそんな指示に従ってくれないから、僕はわざと会話をインターセプトして「いしかわさん、それどのへんのページの話ですか?」と割り込む。このタイミングが早すぎたら、いしかわさんの話題を崩してしまうし、遅すぎたら話の流れは他へ移ってしまう。
 
 話題の中心は各メンバー間の間をすばやくトスされて、シュートに入る体制が見えたら他のメンバーは「受け」の体勢に入る。
 そういう生本番特有の、チーム競技をやっているようなスピード感。話をまとめようとするカンペの指示にわざと逆らい、深い話題へと持っていく大月さんの力技。
 視聴者の見ているのは「マンガの話」だけど、僕たちスタッフは「どのように話すか」「どんな雰囲気を作り上げるか」という、もうひとつの課題にも腐心する。
 
 生放送終了後、みんなむさぼるように視聴者からのFAXを読む。
 自分たちの話が伝わっているのか。そのマンガを読みたいと思ってくれたのか。
 「愛がない」と叱られたり、「もっと突っ込んでくれ」と物足りなさを指摘されたり。
 
 テレビというのは数百万人が同時に見るメディアだ。視聴者はひとりひとり違う人間で、だからみんな心に残る箇所が違う。
 僕たちはその最大公約数に向けて番組を作り、同時に自分たちそれぞれが「わかってもらえないかもしれないけど、これだけは言わなければ」という想いもぶつけなければいけない。
 だから毎回ごとに「今回は成功した」「今回は上手くいかなかった」という喜びや反省がある。
 
 あまりにもテレビ的ではない番組「BSマンガ夜話」。
 討論でもなく、仲良し同士の世間話でもなく、たとえて言えば「すっごく面白い大学マンガ研究会で、先輩たちの話を聞いている感じ」を目指していた番組。
 
 いま、マンガ夜話の新シリーズがストップしているのは「NHK側の事情」だそうだ。
 なによりまず、BSの放送チャンネル自体が縮小され、編成からOKがでない、という事情があると聞く。このあたりは出演者や現場スタッフではどうしようもない「上の事情」なので、風向きが変わるのを待つしかないだろう。
 
 アニメ夜話は今期分は消化したので、来期(来年4月以降)にまた新シリーズをすることは、ほぼ決まっているみたいだ。
 でもマンガ夜話は、少なくとも今のところ再開の知らせは来ていない。
 僕は、ずっと待っている。
 いしかわさんや夏目さんや大月さんや、それにあいちゃんだって、きっと待っている。
 大騒ぎしてもしかたないから、「まだかなぁ」と声には出さないように、しずかにみんな待っているんだ。

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コメント

マンガ夜話、本当に好きで放映は全部見ているほどです。あの番組って、ゲストによっても盛り上がり方がぜんぜん違うし、とても絶妙な出演者のバランスでできていたんですね。

投稿: チビすけ | 2006年10月 6日 (金) 07時43分

「どのへんのページですか?」は、
そういう事情があったんですねぇ。
そこで、いしかわさんは大概、
「や、どのページってことはないんだけど…」
って答えて、その場で適当に探して、
ん?そこでええの?
みたいなページをとりあえず出してくるっていう、
グズグズな感じが面白かったです。

また観たいですねぇ。

投稿: o'hara | 2006年10月 6日 (金) 11時12分

私もマンガ夜話大好きです
大好きな岡田さんと大好きなマンガ夜話の事なのでカキコさてもらいます~

出演者の皆さんも再開を待っているんですね。
個人的には特別再開を待ち望んではいないんですけど・・・う~ん、取り上げる作品の選別の地味さがマンネリっていうか
やっぱ岡田さんよりベテラン陣が、何と言おうと1シーズンに2本はヒットした&してる新しめの作品を夜話で見たい!!(ハガレンのチョイスはさすがです!!)

特定雑誌内の作品で4夜連続とか良いと思うんですが・・・いつか岡田さんが革命を起こして「ジャンプウイーク」とか花火をあげてください。その際はもちろん初日から連続で
「ヒカ碁」&「デスノート」
もうギリギリ大丈夫でしょ?ダメか(笑)

投稿: アイク | 2006年10月 6日 (金) 13時49分

「すっごく面白い大学マンガ研究会で、先輩たちの話を聞いている感じ」に乗せられ、番組終了するとアマゾンで注文したことが何度もありました。テレビのこちら側に伝わってくるものは、熱量質量ともに、他の番組よりも大きかったと思います。
またレギュラー陣や新しいマンガに会いたいです。
まだまだまだまだ、再開を待っています。

投稿: しら | 2006年10月 6日 (金) 14時00分

アニメは好きだからアニメ夜話は当然好きなんですが、
やっぱりマンガ夜話も見たいです。
あのマンガにこのマンガもやってないじゃないかァッ
っていう感じですし。
それぞれのレギュラーメンバーが腹の内を探りあいながら
やってる雰囲気も楽しいです。
まめにNHKに要望を出すくらいしか出来ないのでしょうか・・・。

投稿: terai | 2006年10月 6日 (金) 16時56分

正直、泣いた

投稿: 名無しさん | 2006年10月 7日 (土) 02時27分

マンガ夜話、最近見ていないなと思っていたところでした。来年まで予定がないなんて残念です。
自分の薄い記憶に残るマンガ・アニメを掘り下げてくれるのは、なんだかずっとほっておいたぬかみそをかき混ぜて空気に触れさせてくれるようで好きでした。「あのシーンそういう解釈もできるんだ・・・」「それは考えすぎでしょ(笑)」と当時なんとなく受け止めていた自分を振り返り、新たな発見を得ることができる、その手段がマンガっていうのがまた面白いなぁと感心して見ていました。出演者の独特の雰囲気もまた真剣に語るさまが内容にプラスして視覚的にも楽しめる貴重な番組なのになぁ・・・絶対再開して欲しいです!

投稿: yo-kong | 2006年10月 7日 (土) 09時04分

将来、レギュラー陣セレクト、泣けるマンガや大爆笑マンガの4日連続シリーズなど、やってほしいです。今は、企画を無限に貯めておく充電期間でしょうか(パパ○ギ風〜)。企画が貯まれば、レギュラー陣のオーラが溢れて、嵐の予感がします(鏡の○○みたいな−)

投稿: いたちむし | 2006年10月 8日 (日) 00時02分

>マンガ夜話がないと寂しい。

もう、岡田さん、
「視聴者から新シリーズ希望の流れを盛り上げてくれ」
といえばいいのに!と思いながら読ませていただきました。

私は、マンガ夜話はほぼ全話みている、それなりに
熱心なつもりの一ファンですが、番組でいちばん面白いのは、
やっぱり出演者の皆さんの腹の探りあいの部分です。
その意味でいうと、「BSマンガ夜話」は単にマンガを語る
番組ではなく、「デスノート」に匹敵する面白さを持った
「駆け引き」の魅力が詰まった番組だと思います。

いしかわさんがトークを遮られたときに、すごい剣幕で
「ちょっと待って」
「もうちょっと喋らせて」
と言った後、何いうのかなと思ったら、にんまり笑って、
「俺はこういうところが好きなんだよなー」
と、どうでもいいオチで話を終わらせたり、
岡田さんが停滞した空気を変える為に流れを変えようとすると、
いしかわさんが、
「俺は全然そう思わないよ」
といって、また同じ話を始めたり、
ゲストが、ドーモ君と同じ扱いだったり、
大月さんが「この作品は、こういう存在でしたよね」
といった瞬間、リアクションがなかったら、
「ある意味ね」と補足したり、
私は、あの番組の何もかもが大好きです。

今後DVDがさらに発売される時には、出演者の皆さんの
オーディオコメンタリーが充実すると楽しいんじゃないかと
思います。
名ゲスト、山田五郎さん特集のボックスも欲しいところです。

投稿: 8pri | 2006年10月 8日 (日) 04時40分

全部見てました。アニメ夜話は見ないけど。ジャムする感じがないから。多分素材もあるけど「あのメンツならでは」とおっしゃるのはとてもよくわかります。初期のマンガ夜話は司会さんとか痛々しくて見てられなかったけど、、

>生放送終了後、みんなむさぼるように視聴者からのFAXを読む。

なんかとても意外。軽くスルーされてると思ってた。あとは2chで突っ込むくらいしか二次利用できなかった。
教育テレビの深夜枠でやればいいのにねぇ。BS見れない知り合いとかにビデオを貸し出す手間が省けるし。

投稿: seg | 2006年10月11日 (水) 09時31分

案外、人気シリーズなので、例の視聴料絡みで優良コンテンツの囲いこみでもしてるんですかね?過去初期の放送でDVDパッケージで売られていましたよね?どうせなら過去分も一挙再放送してくれれば。

投稿: dongze | 2006年10月12日 (木) 07時18分

漫画夜話のメンバーの皆さんが本当に楽しんで番組をやっているのはテレビ画面からひしひしと伝わってきます。
大丈夫、みんな待ってくれますよ何時までも。
だって視聴者側も制作者側もこんなにこの番組を愛してるんだから

このまま終わる訳がありません

投稿: sasa | 2006年10月15日 (日) 17時32分

初めまして。

マンガ夜話大好きでした…!
マンガを語る番組は数あれど、これほどまでに見識深く、そしてガチな番組は見たことがありません。

そして、生放送という(どう考えても番組の性質にミスマッチな)形式も外せない魅力です。裏方のトラブル、何を言い出すか分からないゲスト、討論の行方、まさに真剣勝負を見ている気分で背筋がゾクゾクします。

これぞNHK、これぞBS2、そんな気概のある奇跡のような番組でした。せっかくの機会ですので、NHKにも一視聴者としてこの声を届けようと思います。

投稿: よどばしえんどう | 2006年10月15日 (日) 22時52分

マンが夜話は他の番組とは違う面白さがあって懐かしい漫画でも知らない漫画でも面白く見させて頂きました。見逃すこともありましたけど。また再開される日を楽しみにしてます。古い作品ですがケネディ騎士とか取り上げてもらえると個人的にはうれしいです。

投稿: ベル | 2006年10月18日 (水) 09時51分

 いしかわさんが「それは違うよ」と言うと、口元は笑っているけど眼が笑っていない夏目さん。場の雰囲気が重たくなると困った顔の大月さん。隣で下を向いている(多分笑ってる)あいちゃん。そんなときスパッ!と岡田さんがいしかわさんに鋭く突っ込みを入れて…そんな一時間が好きでした。
 mixiでも日記が読めないので寂しい限りです。岡田斗司夫にも禁断症状ー。

投稿: あるご | 2006年10月23日 (月) 04時58分

はじめまして。
最近どうしてマンガ夜話ないのかな?と思いながらも、多分きっともうすぐまたある・・・と根拠は全く無いながらも漠然と思っていたのですが・・・。
時折、見逃していた回もあったので、復活迄の間、初回から今迄の回を、再放送して欲しいくらい、私にとっては、見たい番組です。

投稿: ちょこ | 2006年10月24日 (火) 00時17分

マンガ夜話・・・最近やってないなあ~と思っていたんですけれど、やっぱり色々と事情があるようで・・・残念です。

毎回かかさず観ていたわけでは無かったのですが、
作品を語る切り口とかが面白くて、
いちマンガ読者として勉強させてもらっていました。

アニメ夜話も結構楽しく観させてもらっていますが、
岡田さんのテンションが
「マンガ夜話の時とはあきらかに違う」と随分前から感じていました。

「千年女優」の回は・・・
「どうでもいいや・・・」感が伝わってきましたよ(笑)

マンガ夜話復活を僕も願っています。

僕は「アフタヌーン」読者でもあるので、
来年、大友監督のてで実写化される「蟲師」の特集とかやってもらいたいです。

無理かな・・・。

投稿: 森山ネム太郎 | 2006年11月 7日 (火) 04時24分

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岡田が出演者として率直なコメント書いてますね いしかわ・夏目もHPや日記では、岡田の言う「しずかに待っている」姿勢を 崩さないけど、あの番組が好きだった視聴者としてはこういうコメントが聞けると嬉しいし、安心する。 アニメ夜話も見てるけど、どうしてもマンガ夜話の放送がないのが悔しくなるから、中身がどうこう以前に気持ちが萎えてしまう。 出演者サイドとしては「待つ」しかないのかもしれないけど、 視聴者としてなにかできることはないかなあ・・・ 要望メールとかは出してる人いるようだけど相手... [続きを読む]

受信: 2006年10月 6日 (金) 12時53分

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受信: 2006年10月 9日 (月) 00時38分

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