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2006年11月17日 (金)

「落語2.0」試論 承前

 おとつい、月例行事で「創」誌連載のため、渋谷で唐沢俊一さんと対談した。
 この連載対談、いちおうテーマは最近のオタク事件に合わせて、というお約束になっている。本当だったら「松本vs槇原」とかそういうテーマを選ぶべきなんだろうけど、せっかく唐沢さんに会うんだから、もっと個人的に気になる話をしなくっちゃ!と、むりくりに「じゃあ落語で!」と強引にお願いした。

 唐沢さんに「落語をやる」と相談(でもないか、結論だもんなぁ)したのは先月の同じ対談の場。そのときは「それは面白い。おやんなさい」という調子だったけど、今月は「で岡田さん、なんで落語なの?」と聞き返された。
 おそらくこの一ヶ月の僕の日記を見て「オヤ、どうもこいつは本気、というより狂ってるぞ」と思われたに違いない。

 僕はつっかえながらも、唐沢さんに伝えようとした。いっけんブームに見える落語界は、実は10年前から同じ穴に入っていて抜け出せないこと。落語を変えようと思っていること。新作や古典など、そういう「架空のお話」という枷をとっぱらって、唐沢さんや僕のやってる講義や講演をそのまんま「和服に座布団」というスタイルに持ち込みたいと思っていること。
 唐沢さんには、紙芝居や講釈を次の世代へと伝えたい、という想いがあるのは知っていたので、実は反対される事を予想していた。もともと立川談志のところに出入りしていた人だし、僕の考えている「徒弟制度不必要論(不要論にあらず!)」にはとても賛同してくれるとは思っていなかったからだ。
 しかし唐沢さんは即座に「岡田さんが正しい」とスッパリ切り込んできた。

 「落語の諸問題は、すでに内部の者があーだこーだ言ってどうとかなる段階をとうにすぎている。あなたのような部外者が引っ掻き回さないとダメだろう」
 正確な言葉ではないけど、そう言ってくれてかなりスッキリした。と同時に聞きたくなった。
 「唐沢さんの文芸サバイバル塾、あの内容をそのまんま和服に座布団というスタイルでやったら、それは僕が考える現代の落語なんです。落語、やりませんか?」

 話はそのまま横道にそれて返答は聞けなかったけど、僕は本気でそう思っている。
 ためになる話、教養のある話。それが落語であってなにがいけないのだろうか?
 「客は笑いに来ている」、そのとおりだ。でも観客は「ためになる話」だって笑う。「笑うためにはバカバカしい話でないと」というのも、ずいぶんと笑いを馬鹿にした考えではないか。

 (長いので、先はいずれ)

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