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2006年11月29日 (水)

Scale Over Troubled Water(悪魔の体重計2)

(ひとつ前の日記からの続き)

 朝、おしっこをしてから、まず旧体重計に乗る。他の体重計に比べて、僕に甘い数字を出してくれるサービス体重計だ。
 外国製のガラス張りの体重計。吉祥寺の西武ロフトに並んでいるときから「こういう体重計がある生活もいいなぁ」と思って買った思い出の品だ。

 でも、彼女との甘い生活も今日で終わり。彼女が囁く優しい数字は僕を甘やかしダメにする。現実を見れなくしてしまう。
 そっと彼女に乗ると、しばらくためらったあと彼女は答えた。
 「すごい、斗司夫さん!今日は89.5キロよ!」
 やった、ついに80キロ台突入だ。
 ありがとう。
 でも、本当は違うんだよね。
 お前のおかげでずいぶん元気をもらったよ。最後の最後に「ほら、やったね!ついに80キロ台ですよ」って僕を勇気づけてくれた。

 タニタのいちばん安い、昨日買ったばかりの新体重計に乗る。設定時に自分が住んでる地域まで入力する最新型だ。なんでも地域による地球重力差まで補正してくれるらしい。コリオリ力?重力の等ポテンシャル面?高校の地学で習った言葉が頭を過ぎる。
 体重センサーは一瞬で、悪魔の真実を表示した。

 90.1キロ
 
・・・よ、よがったぁぁぁぁぁ~~~

 体脂肪率も前の測定器よりはずいぶんと減っている。
 ・・・ちょっと待て。
 じゃあ大阪のホテルで量った42%などという聞くも汚らわしい数字はなんだったんだよ!と思わなくもないけど、とにかく本当の体脂肪率がもっと低かったというのはめでたい。

 たぶん今週中には「本当の体重」も80キロ台に突入できるだろう。

 洗面台の上の、めったに使わない七輪やおでん鍋やストレッチボールの空気入れを入れている棚に、彼女はひっそりと納まった。
 ガラスの体重計、ありがとう。ごくろうさまでした。
 また僕がリバウンドして現実が辛くなったとき、周りがみんな敵に見えたとき、僕が通りをさまよっている時に、逆巻く水に架ける橋のようにその身を横たえておくれ。

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