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2008年5月 4日 (日)

昨日の番組の話

 さて、お約束の解題です。
 実は昨日の「ドリームプレス社」、僕にとっては特別な番組だったんです。なんでかというと、というのが今日の日記です。

 森三中の村上さん、一ヶ月半で3キロ痩せてました。それもレコーディング・ダイエットの「助走」段階、つまり「特に我慢せず、今までと同じような食事をする。ただし、体重と食事の記録は毎日つける」という簡単なルールを守っただけで、です。

 実はこの番組の収録は5月1日(木)、つまりオンエアの前日でした。で、本番まで僕は村上さんのダイエットが成功したのか、それとも失敗したのかわからないままだった。
 それはねぇ、すっごく気になりましたよ。もし村上さんがダイエットに失敗しちゃったら、単なる一個人の失敗ではなくレコーディング・ダイエットというメソッドそのものの否定になりかねない。
 だから、「頼むから痩せてくれ!」と祈るような気持ちでスタジオに入りました。その時の僕は、自分の本とレコーディング・ダイエットを守ることばかり考えていたんですよね。

 でもスタジオで、はっきりと顔が小さくなっていた村上さんを見たとき、「助走」フェーズだけで3キロ痩せた村上さんを見た瞬間、なんだか僕はひどく心を打たれてしまった。
 カメラの視界外だったけど、思わず村上さんの手を握って「よかったね!ありがとう!」って言ってしまった。
 村上さんはポカ~ンですよ(笑) そりゃそうでしょうね。彼女にしたら「まだ、たったの3キロ」なんだから。おまけに「ありがとう」と僕が言うのもあきらかにヘン(笑)

 でも僕には、この3キロの意味がわかる。助走段階で一ヶ月半で3キロ、ということは離陸→上昇→巡航と順調に進めば、おそらく年内に村上さんはかなりスリムになるでしょう。番組内で彼女は「63キロだったから、目標は55キロ」と言ってましたが、僕の見積もりでは年内に50キロを切れるんじゃないかな?と考えています。

 いやいや、こういう話はどうでもいいんです。「ほら見ろ、レコーディング・ダイエットで成功したぞ」という話をするつもりじゃない。そんなことはどうでもいいんです。

 僕は今の今まで、二つの理由で本を書いていました。「自分のため」と「みんなのため」です。
 自分のため、というのは「考えたことを広く世に知らせたい」というミーム(知伝子)的本能とか、物書きとして売れたいという願望とか、「男として生まれてきたからには、生きた証を遺したい」という足掻きとか、そういうものです。
 みんなのため、というのは「フロン」や「オタクはすでに死んでいる」を書いたときの動機です。アニメ作りを辞めたとき、僕は人生の第二の目標を「この世界の不幸や苦痛の0.3%ぐらいを軽減する」ことに決めました。「フロン」や「オタクは~」というのは、それぞれの社会カテゴリーで「無用な苦しみを受けている人」への処方箋として書いたつもりです。
 しかし、「いつまでもデブと思うなよ」という本の成功は、僕の予想をはるかに超えていました。なにより、本当に「この世界の不幸や苦痛の軽減に役立ちつつある」という事実に、僕は圧倒されたのです。

 でもですね、そういう「成功感」も、やっぱり自己満足には違いありません。
 ところが、村上さんの成功は、まったく違う視点を僕に与えました。
 これまでメールや手紙で「痩せました!」といううれしい報告はいっぱい受けてきたけど、僕は生まれて初めて、目の前で痩せつつある人を目にしたわけです。
 「あ、僕はこの人にとって、役に立ってるんだ」と思いました。
 成功感や達成感ではなく、僕の心にわき上がったのは、意外にも感謝でした。

 「目の前にいる村上さんという人は、僕の開発したメソッドで痩せている。彼女自身は気づいていないかもしれないけど、離陸→上昇したらさらに痩せるだろう。・・・ああ、僕は誰かの、みんなの役に立ってるんだ」
 「村上さん、僕は生まれてきて良かったよ!ありがとう!」
 テレビ番組収録中なのに、僕は勝手にそんな感動をしていました。

 ・・・え~と、こんな感じなんです。すいません。昨日から予告していたのに、あんまりちゃんと書けた気がしません。
 もっと時間をかけて文意を尽くして書けば、もう少しわかりやすい文章にできるかな、とは思いますが、とりあえず今夜は「思った通りのこと」を書いてみました。
 僕は「人の役に立つ本」を書きたいと思ってきた。でも、それが現実化したとき、一番救われたのは自分自身だ、ということに気づいたわけです。
 このように言語化してしまえば陳腐な「よくある話」かもしれませんね。
 でも、僕は現実に生きて、そんな体験をしたわけです。例え話とか、「よくある話」じゃなく。
 そういう「本当に感動したんだよね」という体験を語りたいと思い、昨日の日記に予告まで書いたわけです。
 ここまで読んでいただいて、ありがとう。
 おやすみなさい。

 岡田斗司夫

 

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