オタキングexのひみつ「バベルの塔」大公開!
すべてはFREEの世界へ向かっているんだ。
新サイト、あと二日ではじまるよ。
この一連のシリーズは二つのブログ(「岡田斗司夫のゼネラルプロダクツ」「レコーディングダイエット2.0のススメ」)の交互で進行しています。
最初から読む場合は、この日記からスタートしてください。
というわけで、話は最初の日記に戻るんだ。
オタキングexは昨日までの段階で、なんと社員数86人を数える大所帯になった。
最初はなんにもなかったんだ。まったく。
僕が会社説明会で呼びかけて、みんなに頭を下げた時は、ほんとうにからっぽだった。
でも、その場で有志が「連絡網を作ろう」と言い出してくれた。記録用に撮影や録音、それどころか会場費集めの受付嬢まで、参加者自身がやってくれた。
なんにもないところから、すべてがはじまった。
もちろん、たった一ヶ月とはいえここまでの道のりはけっして平坦なものではなかったよ。
というより、もうね、ドタバタ騒ぎだったんだよね。なにもかもが。
オタキングexは「本社なき会社」だ。ネットでのやりとりが会議であり打合せ。同じ社員が実際に会う時は「オフ会」というぐらいだからね(笑) 徹底してるよなぁ。
まず、最初は原始的なメーリングリストではじめたんだ。そこで自己紹介から打合せから仕事の立ち上げから全部やるもんだから、メールが交錯してどれが元スレッドかわからなくなった。
いや、あの頃の僕たちはバカだったよ。
なんであんなこと、メーリングリストでやろうとしたんだろう?
だってメールの投稿数がハンパない。深夜に寝て、起きたら未読メールが50件とかそんな調子なんだよ?
おまけにケンカまがいのことまで起きる。
ナツキという武蔵美の女子大生、こいつ、めちゃ可愛いんだけど元気もいっぱいでちょいナマイキ。
で、ヒデオというデザイナー(41才)、こいつはセンスも技術も超一流なんだけど、腕の良い職人に良くあるタイプで口が悪い。いや、実際に会話すると良い奴なんだから「メール文体が、お行儀悪い」というべきか。
職人さんと、跳ねっ返りの女子大生が「オタキングexのロゴをどうする?」という話をキッカケに険悪な雰囲気になっちゃった。周りの大人たちはなんとか沈静化しようとするんだけど、釣られて感情的なメールも飛び交い、事態はますます深みにズブズブ(笑)
なんというか、みんな年間12万支払って、人のために働きたいという「有徳の士」なんだよ。でも、それでも人間だから深夜に中学生みたいなメールのやりとりしてるんだ。
たぶん、本気だからこそ、ムキになっちゃうんだよね。人間って面白いよなぁ。
え?僕はなにしてたかって?
なにもできるはずないじゃん(笑)
いままでアニメーターやマンガ家を相手にしてきたから、わかるんだけどね。
あのね、腕に覚えのある職人を納得させるのは難しいんだよ。「発注主」または「自分より技術のある奴」の言うことしか聞かない。ヘタしたら発注主の言うことだって聞いてくれないんだから(笑)
僕なんか、なんど貞本義行に「じゃあ岡田さんが描いてください」とスネられたことか。
こういう場合、僕が裁定に入って「今回の件はヒデオにまかせた!」「ナツキにやらせなさい!」とか決めたら問題はたぶんすっきりしただろう。
でもそれではダメなんだ。組織、というより「人の集まり」はそうやって作るべきじゃない。それじゃ「タダの会社」になっちゃう。
「やりたい人が、やりたいことを好きなように試せる場」なんだよ、うちは。
ナツキは「小娘の理屈では押さえられないプロ根性」と対決すべきだし、同時にヒデオは「プロ世界の『当たり前』が通用しないフラットな組織」を学ぶしかない。
でないと、これからどんどん入ってくる新入社員たちといっしょに仕事できないよ。
早く入社した奴が全部仕切っちゃうような、閉鎖的な組織にしちゃダメなんだ。
ここは普通の会社じゃない。利益を追求しなくていいし、スケジュールだって別に「死守」しなくていい。言い方は悪いけど「クオリティ」だって場合によってはあきらめてもいい。
唯一、この会社が守り通さなければいけないもの。
それは「オープンである」「透明である」という意志だ。
組織の意志決定は、全員がプロセスと結果を見られる。
会社立ち上げから参加してる「兄さん」も、今日入社したばかりの新入社員もまったく同じ立場でオンライン会議のテーブルにつける。
このルールだけはバカ正直に守らなくちゃいけない。
これ、遵守するのはすごく難しい。
僕自身、このルールに意識せず違反して、三日前のことだけど全社員に謝罪文を書いたぐらいだ。
間違いはかまわない。隠したりごまかしたりする行為を軽蔑する。そういう会社にしたいんだ。
とまぁ、さんざんのすったもんだの末、連絡網としてのメーリングリストは役割を終えてSNSができあがった。暫定版だからmixiそっくりだけど、じゅうぶん役にはたっている。
このSNS内にコミュニティをいっぱい作った。我が社はネット上にのみ存在する会社なので、このコミュが事業部であり研究所だ。
SNSの名前は「バベルの塔」。
オオゲサな名前だけどちゃんと由来もあれば理由もある。そのあたりはまた今度ね。
じゃ、ちょっとバベルの塔内部を案内してみよう。
まだ建設中だからごちゃごちゃ片付いてないけど、気をつけてね。
バベルの塔の地上階~中層には「研究所」と「事業部」がある。
まず研究所。ここは「テーマ別・大人のしゃべり場」だ。
オタキングexに参加して、心ゆくまで勉強したいとか語りたいという、理屈っぽい(または理屈にあまり抵抗感がない)我が社の社員たちは、ここで嬉々としてもう語るかたる(笑)
ダイエット研究所(レコーディングダイエットを語り合う)
オカダノート研究所(ノート術の開発や実践を語り合う)
オタク研究所(ガンダムとかマンガとかオタク話を語り合う)
会社デザイン研究所(オタキングex自体の社内組織を語り合う)
4タイプ研究所(「人生タイプ」の4タイプ分類を語り合う)
思想本部(評価経済や世界征服の方法など、思想的なことを語り合う)
その他、フリートーク研究所、模型研究所、グルメ研究所、恋愛研究所、言論研究所など現在11の研究所がある。
いま熱いのはダイエット研と思想本部かな?
ダイエット研は初代所長に関西の歯科医ナツコが任命されて、いきなり見事な采配を見せた。
思想本部では「評価経済社会での通貨はどのようにあるべきか?」「はてなデザインの見事さ」とかが最近の話題。ここの話は最近、僕も難しすぎて参加できなくなりつつあるのはナイショね(笑)
バベルの塔・中層部にある事業部は「作りたい人」向けの組織だ。
イベントの運営やサイトの制作、その他なんでも扱う。
ライブ事業部(「ひとり夜話」などイベントの企画運営)
映像事業部(「ひとり夜話」などの映像配信やDVD化など)
オーディオ事業部(オーディオブック制作と配布)
ブログ事業部(著作アーカイブや映像配信、掲示板など巨大サイトに育つ予定)
メルマガ事業部(無料登録できるメルマガを発行したい)
電子出版事業部(これも無料を目指す)
携帯、iPhoneアプリ事業部(やってみたいんだよね。レコダイ専用のアプリも無料で配布したい)
いま一番忙しいのはブログ事業部。とりあえず4月2日(金)深夜24時の新サイトオープンに向けて突貫工事中だ。オタキングexの社員は本業がある人が多い。だから基本は土日やすきま時間での仕事になる。それにしてはみんな頑張ってくれているよ。
iPhone事業部には、僕はエッセイ集「オタクの迷い道」のデジタル出版ができないか打診している。社内にiPhoneアプリ開発経験者がいるかどうか、まだ知らない。いなかったら勉強すればいいだけだから、ま、なんとかなるでしょ。
社員はこれらの、どの事業部や研究所に属するのも自由。抜けるのも自由。いくつ掛け持ちしてもいいし、ひとつも所属しなくてもOK。
燃え尽きるほど働くのも自由だし、単にROMしてるだけでもまったく問題ない。みんな仲間だし、ひとつの家族だ。
さて、高層階に行ってみよう。
バベルの塔には三つの部屋がある。
「社長室」「情報室」「スナックゆうこ」だ。
社長室があるのはバベルの塔の最上階。フロアには秘書課があり、可愛い女子社員と屈強なオッサン社員と、すましてるとイケメンなのに笑うと顔面崩壊するバカリズム顔の秘書たちが在籍している。
最上階の社長室は眺めはいいけど、ちょっと孤独だ。だから僕は、毎日スナックゆうこに通っている。
バベルの塔・上層階に位置する「スナックゆうこ」は、社員たちの憩いの場だ。
社長に見られない秘密の部屋まで作ってある。ここ、本当に僕がのぞけない仕組みにしたから、どれぐらい社員が利用してるか僕は知らない。この件についてゆうこママに聞いても艶然と微笑んで話をはぐらかされてしまう。ちくしょう!
仕切ってるゆうこママの本業は占い師。
優雅な関西弁をあやつる謎の美女だ。肌やオッパイの張りはどう見ても20代前半なんだけど、サンダーバードとかウルトラQとか光瀬龍とか、特濃のオタクトークの内容から考えると、絶対に三十路には達してないとおかしい。1970年に来日したR.A.ハインラインと握手したとか、黒魔術で老化を止めているとか怪しげな噂が絶えない女だ。
やりたいことがある社員は僕に相談して、企画の決済を貰う。そのあと彼はスナックゆうこのカウンター席に足を運ぶ。
同じスナックゆうこでも、テーブル席は社員たちのたまり場だ。しかしカウンター席は違う。海千山千のプロデューサー連がどっしり占領し、ゆうこママを口説いたり説教されたりしている。
こないだもチーフプロデューサーのカズヨシがママに「あほんだれ!」と上品だけど柳眉を吊り上げて怒られていた。いい気味だ。
このプロデューサーというのは制度というより「人間関係を制度っぽくした仕掛け」なんだ。
彼らプロデューサーは社員から企画を持ちかけられると、自分で引き受けるかどうか決める。引き受けたら自分の名前のついたコミュに企画名のトピックを立ち上げる。これでその企画はプロデューサーの「預かり」となったわけだ。
以後、その社員は企画の「担当(監督)」となり、プロデューサーが実現への差配を面倒見るというわけ。僕がアニメを作っていた時の組織作りをまるまる移植したけど、このほうが普通の縦割り型組織にしちゃうより、ずっと人間くさくて実は合理的な仕組みだと思うんだ。
さて、バベルの塔の地下、最下層にある情報室は、他社で言うところの財務と経理だ。
世界初の「評価経済に特化した企業」であるオタキングexは、お金を儲けなくていいかわりに、世間からの注目や評価を集めなくてはいけない。すなわち「目立ってナンボ」「世の中のタメになることしかしない」が運営方針だ。
我が社にとって「注目」はキャッシュフローであり、「評価」こそが資産なんだ。
貨幣経済転覆を目指し、評価経済の確立を目指すのがうちの社是。別に悪いことしてるわけじゃないけど、「貨幣経済転覆!」とうたってるんだから、いちおう部署は秘密基地っぽく地下フロアになった。
情報室に配属された社員たちはお互いを00(ゼロゼロ)ナンバーで呼び合っている。どうやらスパイごっこらしい。30を越えた子持ちのオッサンもいるんだぜ。本当にこいつらバカだよなぁ。ちょっとうらやましい(笑)
以上、ざっとバベルの塔を案内してみたけど、どうだった?
バベルの塔は文字通り不夜城。みんな本業の時間もマチマチだし、フリーランスや学生もいれば失業者だっているから(笑)、なんだか「いつでも誰かがいる」という感じ。
研究所や事業部だけじゃなく、自分の日記(日報)を書くのも推薦されている。それを読むだけでも面白いし、それどころか「今日のバベルの塔ではこんな事件が起こりました!」「日報の人気ランキングを発表します!」とか、かってに新聞を発行する奴まででてくる始末だ。
気をつけないと一日じゅうバベルの塔に籠もることになっちゃうよ。
でも、あと少しだ。
あさっての夜には、新サイトも公開される。
最初は不完全なものだ。
期待はずれといわれるかも知れない。
それでも、僕たちはコツコツとサイトの拡大と、無料で提供できるコンテンツを増やしていくことを約束する。
見に来てくれた人が自由に書き込める掲示板も用意したよ。僕だけでなく、社員もいっしょに掲示板でみんなと話したい、と思っているんだ。
リクエストがあれば、どんどん掲示板に書いて欲しい。
オタキングexと同じような会社を作りたい人の相談にものるよ。
バベルの塔も、いまの暫定版では不可能なんだけど、いずれは会員や無料会員に公開したいと思ってるんだ。
「いつでも見学に行けて、会議にも参加できちゃう少年ジャンプ編集部」みたいなのを目指してる、といえばイメージわかってもらえるかな?そんな感じだ。
でも、いまだに信じられないよ。
一ヶ月前まで、僕にはなんにもなかったんだよ。
そう。すべてはFREEの世界へ向かっているんだ。
新サイト、あと二日ではじまるよ。
今日はここまで。
続きは明日、「岡田斗司夫のゼネラルプロダクツ」でね。
今日のBGMは『やつらの足音のバラード』だよ。
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